PANELIZE Technical Notes #006
デジタルサイネージのCPUとSoCは何が違う?STB・Androidディスプレイの中身を読み解く
現場で役立つ知識を、現場の経験から。
PANELIZE Technical Notesは、デジタルサイネージの設計・施工・運用を通じて得た知識や経験を共有する技術コラムです。
製品紹介ではなく、現場で実際に起こる課題や、その解決方法を中心に解説しています。
今回のテーマは、デジタルサイネージのSTBやAndroidディスプレイを選ぶときによく出てくる「CPU」と「SoC」です。
STBのスペック表を見ると、「RK3568」「RK3588」「Amlogic」「Allwinner」など、さまざまな名称が並んでいます。
しかし、これらを単純に「CPUの型番」と考えてしまうと、機器の性能を正しく理解できません。
実際には、デジタルサイネージで使われるSTBは、CPUだけで動いているわけではありません。GPU、動画デコード、RAM、ストレージ、通信、USBなどのインターフェイス、放熱、ファームウェアなど、さまざまな要素が組み合わさって1台の製品になっています。
この記事では、CPUとSoCの基本的な違いから、STB選定で実際に確認したいポイント、さらにSoCをディスプレイ内部に組み込んだSoC内蔵Androidディスプレイまで、デジタルサイネージの現場で機器を選ぶ視点から解説します。
CPUとSoCは何が違う?
まず、CPUとSoCの違いを簡単に整理しましょう。
CPUは処理を担当するプロセッサ
CPUは、コンピューターの中でさまざまな命令を処理するプロセッサです。
Android端末であれば、OSやアプリケーションの処理など、多くの計算処理をCPUが担当します。
CPUには「Cortex-A55」のようなCPUコアのアーキテクチャがあります。
そのため、スペック表で「Cortex-A55 4コア」と書かれていた場合、これはCPUコアの構成を示している情報です。
SoCはCPUを含む複数の機能をまとめたもの
SoCは「System on Chip」の略です。
CPUだけを搭載したチップではなく、製品によって異なりますが、CPU、GPU、メモリコントローラー、映像処理、各種インターフェイスなど、コンピューターを構成するための複数の機能を1つのチップに集約しています。
つまり、イメージとしては、
と考えると分かりやすいでしょう。
ただし、SoCにすべての部品が入っているわけではありません。RAMやストレージ、電源回路などは製品側で別途構成されます。
「RK3568」はCPUなのか?
デジタルサイネージのSTBでは、Rockchipの「RK3568」などの型番を目にすることがあります。
RK3568はCPUそのものではなく、CPUなど複数の機能を統合したSoCです。
RK3568にはArm Cortex-A55ベースのCPUコアが搭載されています。
つまり、次のように整理できます。
- RK3568 → SoC
- Cortex-A55 → SoCに搭載されているCPUコア
- CPU → Androidやアプリなどの処理を担当するプロセッサ
この違いを理解しておくと、STBのスペック表を見るときに「RK3568だからCPUが4コア」といった混同をしにくくなります。
SoCの中には何が入っている?
SoCはCPUだけで構成されているわけではありません。
デジタルサイネージのSTBで特に重要なのは、次のような機能です。
- CPU
- GPU
- 動画デコード・エンコード機能
- メモリコントローラー
- 映像出力などの各種インターフェイス
- 通信関連の機能
これらを1つのSoCに集約することで、STBの小型化や低消費電力化につながります。
一方で、同じSoCを搭載しているからといって、STB全体が同じ性能になるわけではありません。
RAM容量、ストレージ、電源、放熱、基板設計、通信モジュール、ファームウェアなどは製品ごとに異なるためです。

CPUのコア数が多ければ高性能?
STBのスペックを見ると、「4コア」「8コア」など、CPUのコア数が目立ちます。
コア数はもちろん重要な情報ですが、コア数だけでSTBの性能を判断することはできません。
CPUのアーキテクチャや動作周波数、GPU、動画処理機能、RAM、ストレージ、OS、ファームウェアなど、実際の動作には多くの要素が関係します。
特にデジタルサイネージでは、一般的なPCのようにベンチマークスコアだけを見て判断するよりも、実際に使用するコンテンツが安定して動くかを見ることが重要です。
デジタルサイネージでは、CPUのコア数だけでなく、GPU、動画処理、RAM、放熱、ファームウェア、インターフェイスなどを含めて考える必要があります。
4K動画ではCPUだけを見てはいけない
「4K対応」と書かれたSTBを選ぶ場合も、CPUだけを確認するのは不十分です。
動画再生では、動画をデコードするためのハードウェア機能が重要になります。
例えば、H.264、H.265/HEVC、VP9、AV1など、対応するコーデックはSoCや端末によって異なります。
さらに、対応解像度やフレームレートだけでなく、ビットレートや再生方式、ブラウザ上での再生なのか、専用プレーヤーでの再生なのかによっても結果が変わります。
そのため、スペック表に「4K対応」と書かれていても、実際に使用する4Kコンテンツが安定して再生できるかは別途確認が必要です。
- ☐ 再生する動画の解像度
- ☐ H.264・H.265などのコーデック
- ☐ フレームレート
- ☐ ビットレート
- ☐ 動画を再生するアプリ・ブラウザ
- ☐ 実際のコンテンツでの再生状態
- ☐ 長時間連続再生した場合の安定性
SoCが高性能でもSTBが高性能とは限らない
ここは、PANELIZEでもSTBを選定するときに特に気を付けているポイントです。
例えば、同じSoCを搭載したSTBが複数あったとしても、実際の使い勝手や安定性まで同じとは限りません。
STBは、SoCを基板に載せただけの商品ではありません。
電源、放熱、RAM、ストレージ、通信モジュール、USBなどのインターフェイス、Android OS、ファームウェア、筐体設計など、さまざまな要素を組み合わせた製品です。
実際の現場では、スペック表だけを見ると非常に高性能に見えるのに、アプリが落ちたり、長期間の運用で問題が出たり、故障率が気になる製品に出会うことがあります。
もちろん、これは特定のメーカーや価格帯の製品がすべて問題を抱えているという話ではありません。
ただ、SoCを搭載した基板をケースに入れただけに近い製品の場合は、SoCそのものだけでなく、放熱、電源設計、ファームウェア、品質管理まで含めて確認することが重要です。
スペック表だけでは、実際の製品の安定性までは分かりません。
「高性能なSoCを搭載しているか」だけではなく、そのSoCを使ったSTBとして、長期間安定して運用できる製品なのかまで確認することが重要です。
STBを選ぶとき、PANELIZEが見るポイント
では、実際にデジタルサイネージ用のSTBを選ぶ場合、何を見るのでしょうか。
SoCとRAM
まず確認するのがSoCとRAMです。
どれだけ高性能なSoCでも、用途に対してRAMが不足していれば、快適な動作ができない場合があります。
逆に、単純な動画再生だけであれば、必要以上に高性能なSoCを選ぶ必要がないケースもあります。
重要なのは、使用するコンテンツに対して必要な性能を持っているかです。
発熱
STBは長時間連続して稼働することが多いため、発熱も確認します。
高温になりやすい製品では、使用環境や放熱設計によって安定性や部品の寿命に影響する可能性があります。
そのため、スペック表だけでなく、実機を動かしたときの筐体温度や設置環境との相性も確認したいポイントです。
Wi-Fi・LAN
通信方式も重要です。
Wi-Fiだけで運用するのか、有線LANを使用するのか。設置場所によっては通信の安定性が非常に重要になります。
対応規格だけを見るのではなく、実際の設置環境で安定して通信できるかまで考えます。
USBなどのインターフェイス
意外と見落としやすいのがUSB端子です。
例えば「USBが2ポートある」というスペックだけでは十分ではありません。
USB端子同士の物理的な間隔も重要です。
USBメモリを接続した状態で、マウスや別のUSB機器、通信ドングルなどを接続すると、端子の位置によっては物理的に干渉することがあります。
紙のスペック表では分からない、実機ならではの確認ポイントです。
- ☐ SoC
- ☐ CPU構成
- ☐ GPU
- ☐ RAM容量
- ☐ ストレージ
- ☐ 動画デコード性能
- ☐ 発熱・放熱設計
- ☐ Wi-Fi
- ☐ 有線LAN
- ☐ USBポート数
- ☐ USBポート間の物理的な間隔
- ☐ HDMIなどの映像出力
- ☐ 必要な周辺機器を同時接続できるか
- ☐ 実際のコンテンツで安定して動くか
スペック表では分からないSTBの違い
STB選定で難しいのは、スペック表だけでは分からない部分があることです。
CPUやSoC、RAM容量が同じでも、アプリの安定性や長時間運用時の挙動が異なる場合があります。
ファームウェアの作り込みや、電源・放熱などのハードウェア設計によっても、実際の製品としての完成度は変わります。
デジタルサイネージでは、短時間だけ動けばよいわけではありません。
営業時間中ずっと動き続けることも多く、案件によっては長期間にわたって連続運用します。
そのため、「動くか」ではなく「継続して安定して動くか」を見る必要があります。
「スペックが良い=良いSTB」とは限りません。
アプリが落ちないか、長時間運用で問題が出ないか、発熱に問題がないかなど、実機で確認しないと分からない部分があります。
SoC内蔵Androidディスプレイという選択肢
ここまでSTBについて説明してきましたが、デジタルサイネージにはもうひとつの構成があります。
それが、SoC内蔵Androidディスプレイです。
一般的な構成では、ディスプレイとAndroid STBを別々に用意します。
一方、SoC内蔵Androidディスプレイでは、Androidを動かすためのSoCや基板をディスプレイ側に組み込んでいます。
中国市場などでは、10.1インチ程度の小型サイズから大型サイズまで、SoC内蔵Androidディスプレイが幅広く製品化されています。
PANELIZEでも、特に10.1〜21.5インチ程度の製品は、什器への組み込みなどで活用する機会があります。
SoC内蔵ディスプレイが向いているケース
什器への組み込み
店舗什器などに小型ディスプレイを組み込む場合、ディスプレイとSTBを別々に設置すると、STBを収納するスペースも必要になります。
什器内部に電源タップやHDMIケーブルなどを収める必要があると、設計が複雑になることがあります。
SoC内蔵ディスプレイなら、表示機器とAndroid端末を一体化できるため、什器内部の構成をシンプルにしやすくなります。
配線や電源をシンプルにしたい場合
ディスプレイとSTBを別々に設置すると、それぞれの電源や映像ケーブルが必要になります。
特に店舗什器の中など、スペースが限られた場所では、機器が増えるほど配線処理も複雑になります。
SoC内蔵タイプでは、機器を一体化することで、電源や配線をシンプルにできる場合があります。
常設する小型端末
サイネージ用途では、タブレットのようにバッテリーを充電しながら使うのではなく、AC電源に接続して常設することを前提とした製品があります。
こうした製品では、バッテリーの充電や経年劣化を考慮する必要がない点も、用途によってはメリットになります。
一体型のメリットとメンテナンス性
SoC内蔵Androidディスプレイは設置面では便利ですが、メンテナンスでは外付けSTB方式との違いがあります。
外付けSTBならSTBだけ交換できる
ディスプレイとSTBが分離している場合、STBが故障しても、基本的にはSTB側だけを交換できます。
ディスプレイをそのまま使用できるため、故障箇所によっては復旧作業をシンプルにできます。
一体型では内部作業が必要になる場合がある
SoC内蔵ディスプレイでは、Android側の基板に問題が発生した場合、製品によってはディスプレイを取り外し、筐体を開け、基板やコネクタを交換する必要があります。
そのため、設置時には便利でも、故障時の作業性では外付けSTB方式が有利になるケースがあります。
もちろん、基板交換の方法や構造は製品によって異なります。
導入前に、故障時にどこまで分解する必要があるのか、交換部品をどのように調達するのかまで確認しておくと安心です。
一体型は「設置しやすい」ことと「修理しやすい」ことが必ずしも一致しません。
導入時には、設置性だけでなく、故障したときに誰が、どこまで作業するのかまで考えておくことが重要です。
一体型とセパレート型、どちらを選ぶ?
- 外付けSTBが向いているケース
- ☐ STBを交換しやすくしたい
- ☐ ディスプレイの選択肢を広く持ちたい
- ☐ 高輝度など、液晶側の条件が厳しい
- ☐ 将来的にSTBだけ交換する可能性がある
- ☐ 大型ディスプレイを使用する
- SoC内蔵Androidディスプレイが向いているケース
- ☐ 什器に組み込みたい
- ☐ 設置スペースをできるだけ小さくしたい
- ☐ 電源・HDMIなどの配線をシンプルにしたい
- ☐ 小型のAndroid端末を一体化したい
- ☐ ディスプレイとAndroid端末を一体として扱いたい
どちらが優れているということではありません。
設置性を優先するのか、メンテナンス性を優先するのか、液晶の自由度を優先するのか。
案件の条件によって適した構成が変わります。

液晶の自由度という違い
SoC内蔵Androidディスプレイでは、もうひとつ注意したいポイントがあります。
それが、液晶パネルの選択自由度です。
デジタルサイネージでは、設置場所によって必要な輝度が大きく変わります。
一般的な屋内環境なら標準的な輝度でも問題ありませんが、窓際や明るい店舗などでは、より高輝度のディスプレイが必要になる場合があります。
しかし、SoC内蔵Androidディスプレイの場合、メーカーが用意している液晶パネルの選択肢に左右されることがあります。
そのため、「Androidを内蔵できること」と「希望する液晶仕様を選べること」は別の話として考える必要があります。
外付けSTB方式なら、STBとディスプレイを別々に選定できます。
高輝度、大型サイズ、特殊な設置方法など、ディスプレイ側の条件が厳しい案件では、セパレート構成の方が柔軟な場合があります。
実際のコンテンツで検証する
ここまでCPUやSoCについて説明してきましたが、最終的に重要なのは実際に使用するコンテンツで検証することです。
スペック表に「4K対応」「H.265対応」「8コア」と書かれていても、それだけで実際のコンテンツが問題なく動くとは限りません。
特にWebコンテンツでは、JavaScript、動画、アニメーション、地図、外部APIなど、さまざまな処理が組み合わされます。
単純な動画再生とは違い、CPU、GPU、RAM、ブラウザ、ストレージなど複数の要素が影響します。
- ☐ 実際に使用する動画を再生する
- ☐ 想定する解像度で確認する
- ☐ Webコンテンツを実際に動かす
- ☐ タッチ操作が必要なら実機で確認する
- ☐ 長時間連続運転する
- ☐ 再起動後の動作を確認する
- ☐ Wi-Fi・LAN環境で確認する
- ☐ 必要なUSB機器を同時接続する
- ☐ 発熱状態を確認する
- ☐ 故障時の交換方法を確認する
サイネージでは、「スペック上動く」より「実際のコンテンツを長期間安定して動かせる」ことの方が重要です。
CPU・SoCの数字だけで機器を選ばない
デジタルサイネージのSTBを選ぶとき、CPUのコア数やSoCの型番は重要な判断材料です。
しかし、それだけで機器の性能や安定性を判断することはできません。
SoCはあくまで製品を構成する中心部品のひとつです。
RAM、ストレージ、GPU、動画デコード、放熱、電源、ファームウェア、通信、USBなどのインターフェイスなど、さまざまな要素が実際の製品性能に関係します。
さらに、SoC内蔵Androidディスプレイを選ぶ場合には、設置性だけでなく、故障時のメンテナンス性や液晶パネルの選択自由度まで考える必要があります。
STBを選ぶときに、私たちが最終的に見ているのは「一番スペックが高いか」ではありません。
どんなコンテンツを使うのか。
どのくらいの時間、どのような環境で動かすのか。
故障したときにどう交換するのか。
そうした条件を整理したうえで、その案件に必要な性能と構成を持った機器を選ぶことが重要です。
まとめ|CPU・SoC・STBを一緒に考える
CPUとSoCは似たように扱われることがありますが、正確には別のものです。
CPUは処理を担当するプロセッサで、SoCはCPUを含め、GPU、映像処理、各種インターフェイスなど複数の機能をまとめたチップです。
デジタルサイネージで使われるRK3568なども、CPUそのものではなくSoCです。
また、SoCの性能が高いからといって、STB全体の性能や安定性が必ず高いとは限りません。
RAM、ストレージ、放熱、電源、通信、USBなどのインターフェイス、ファームウェアなどを含めて、ひとつの製品として見る必要があります。
さらに、SoC内蔵Androidディスプレイは、什器への組み込みや省スペース化、配線の簡略化に向いている一方、故障時のメンテナンスや液晶パネルの選択自由度では、外付けSTB方式が有利になる場合があります。
最も重要なのは、スペック表の数字だけで機器を決めないことです。
実際に使うコンテンツ、設置環境、運用期間、保守方法まで含めて考えることで、その案件に適したSTBやAndroidディスプレイを選びやすくなります。
「あの記事、PANELIZEに書いてあったな。」
私たちは、そんなふうに思い出していただける技術メディアを目指しています。
製品を紹介するだけではなく、
「なぜそう設計するのか。」
「現場では何を判断基準にしているのか。」
そうした実務で役立つ知識を、PANELIZE Technical Notesとして発信しています。
ノウハウを囲い込むのではなく、現場で役立つ知識を業界全体へ。
このTechnical Notesが、皆さまの次の現場で少しでも役に立てば幸いです。
また次の現場でお会いしましょう。
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※Technical Notesは、現場で得た知識を少しずつ積み重ねる技術シリーズとして更新しています。


